あれをやるんじゃない
それはダメ
禁止されることで守られてきた
若者がどれだけ多いことか
俺は漁師のせがれ
小さい時から親父の船に乗せられて手伝わされてきた
もちろん手伝っていたのは、俺の意思ではない
好きも嫌いも無い
それが当然だと思って手伝ってきた
そんな親父がガキの俺に教えたことは
「船の危ないところはこことここ」
「そこには行くな」
「船の上でこんなことはするな」
「船から落ちるな」
そんなことではない
親父が俺にしつこく何回も教えたのは
「いいか もし落ちたら こうしろ
こうやって浮いて、こうやって上がって来い」
要するに 落ちたらどう対処するかだ
船の上で一番安全なことは
親父の傍を離れずじっとしていることだ
それじゃ何のために俺が船に乗ってきたのか
全く意味が無い
さて
消防活動に当てはめてみよう
今月の「近代消防」に
ほんの1ページの小さな記事だけど
俺が小隊長になった時ぐらいから
ずっと違和感を覚えていた上からの、ある一つの指示
「安全管理に十分留意せよ!!」
訓練でも災害現場でも、隊長が任務を下命した後の
最後に必ずと言っていいほど発する
隊長の十八番だ
確かにカッコいいよ
最後に締まるのかもしれないし
隊員も 「よし!」って言い易い
でも、チョッと待てよ
こんな危険な場所で活動すること自体
既に安全ではないのに
「じゃ~いったい俺たちにどうせって言うのよ?」
と突っ込みを入れたくなるのが、この言葉だ
無線からスラスラと流暢に聞こえてくると
カッコいいって感じがするけど
中身の無い命令だ
どうせ言うなら、もっと具体的に
「この場所がこういう状態で、こんな危険がある」
という状況だけを周知してくれれば
その対応方法は各隊各自に任せる
もちろん任せられるということは
普段の訓練で知識と技術を習得しているという
前提と裏付けがあってのことだ
今月の「近代消防」のその記事は
正に、そこのポイントを突いた記事だった
マラソンでコーチが
「疲れないように走れ」
って選手に言ってるの聞いたことがあるか?
疲れないように走る なんて所詮無理
疲れてきた時に、今の自分の調子と残された体力
そしてモチベーションを考え
心身と相談しながら、そこからどう走るかが大事なことであって
そこは消防活動とリンクするところだ
そのためにランナーは、その状態を事前に体験して
その時のデータを蓄積しておいて、
その時がきたら
どうするかを確認しておくために 毎日走る
「あいつ頭おかしいんじゃないか?」
と言われても 雨でも走る 風が強くても
ひたすら その時のために
走る
消防の訓練も同じだ
災害現場の危険な状況を再現して行うからこそ
意味があるんじゃないのか?
冬の積雪時に三連梯子を架梯する時の足場は
綺麗に除雪されているのか?
一般住宅の窓に、梯子をロープで固定するような
そんな都合の良いパイプなんてあるのか?
かぎ付き梯子で最初に登っていく隊員の
安全確保って、いったい何だ?
現着時のFOが発生しそうな状況で活動する時
「FOに注意しろ!!」 えっ!? それだけ?
中高層火災、高所からの降下訓練
懸垂ロープ、窓枠沿いにロープを垂らしちゃって燃えないのか?
屋上より上に支点って作れる? その降下方法 合ってる?
床が抜け落ちそうな室内、踏み抜きそうな屋根には進入するな
ではなく
進入する時はどうする?が大事であって
そんな様々な危険な状況を作り出して
事前に対応や対処の方法を身につけておくこと
それを訓練って言うんじゃないのか
全てにおいて安全管理された綺麗な訓練場で
周りに守られながら実施する訓練に何の意味がある
立ち会っている上司や先輩というのは
本に書いてないことを自らの体験を通して
後輩や部下に伝えていくためにいるんじゃないのか?
あれするな
これするな
怪我するな
「安全管理に十分留意せよ!!」
それって 本当はあんたの役目ですよ 隊長!!
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