この先にあるもの

公務員卒業
自分の気持ちを最優先に、この先のことは少しづつ考えながら
赴くままに生きてみたい。

2023年7月12日水曜日

奥尻島

 30年前の今日

俺は、災害派遣の準備をしていた

家の中は地震でメチャクチャ

そんな状況で5歳、3歳、1歳の子供たちと妻を残し

奥尻島での活動をイメージしながら、リュックに食料を詰め込んでいた

当時は、緊急消防援助隊の制度はまだなく、北海道の相互応援協定だけで動いた


奥尻島は、震災前の年まで職場の慰安旅行で何度も楽しませてもらった楽園

うに、アワビの食べ放題

透き通った奥尻ブルーの海

夏と言えば奥尻だった

そんな楽園が、一夜にして地獄絵図と化してしまったあの日


人命救助という名の死体捜索では指揮体制が混乱した

海保なのか海自なのか、はたまた北海道の消防なのか東京消防庁なのか

警視庁までくるという、全国の救助隊が奥尻に集結していた

そして朝一度だけ各組織の代表が集まり、担当区域を奪い合い単独で活動する


地元でありながら、どこかの指揮下に入り合同で活動しなければ

組織力が足りない我ら道西地区の消防


そんな状況で函館市消防本部の水難救助隊と行動を共にした俺は

何故か皇居のお濠を専門に潜っている警視庁の潜水部隊と一緒に

青苗港の捜索に加わった


あれから30年

北海道南西沖地震の教訓は生かされず

その2年後に発生した阪神淡路大震災では

同じく、全国の消防が集結したにも関わらず

指揮体制は混乱し、資機材の互換性もなく救助と消火の時機を逸した


あれから30年

北海道の消防は、津波の恐ろしさを経験していながら

海岸線近くに安価な平坦地と広大な土地を求めた結果

消防署が津波災害警戒区域に建っているという現実がある


あれから30年

直ぐ近くで発生した大地震と大津波だった。人ごとではなかった はずだ

それなのに

自分も含めた市民、道民は俄かに「そんなデカイ津波なんか来るはずがない」

と、どこかで思っている。


あれから30年

あんなに楽しかった思い出ばかりの楽園島

もう復興しているのに、島民は頑張って持ちこたえたのに

未だ一度も足を踏み入れてはいない。


31回目の夏は

青苗港に行って

発見してやれなかった人たちの魂に謝ってこよう


日本最西端と最南端の島 それぞれに憧れがあって

そこに行く という目標は達成した

ただ、やっぱり気持ちがモヤモヤしているのは

あの日以来、奥尻島を避けていた自分への戒めと

復興した奥尻島をこの目に焼き付けておきたい

という、心の奥底にある隠れた願望のせいだ


行こうと思えばいつでも行ける手段と

時間と若干の資金はある

31回目の夏は

青苗港に行って

発見してやれなかった人たちの魂に謝ってこよう


決めた



2023年7月10日月曜日

ROLEX

 2023年7月8日 土曜日

俺はエスコンフィールドにいた

息子と孫、娘に妻の5人

試合は、清宮の疑惑ホームランもあり上沢も宮西も頑張ったけど

3対2で逆転負け

そんなことは俄かファイターズファンとしては、大したことではない


北広島駅までの帰り道

はしゃぎ過ぎて疲れ果てた孫を背中におんぶし

上腕二頭筋に全神経を集中させ、背中の天使を絶対に落とさないようにと

老いぼれてきた爺ちゃんは汗だくで駅へと向かう・・・

そんな時

「お父さん、突然でなんだけど・・・その時計俺に譲ってくれない?」

エ!? なに? ロレックスか?

「うん 俺もスーツとか着る時に、流石にアップルウォッチはさぁ

なんか合わないなぁって・・・・」


想えば、40年前

新婚旅行で行ったグァム島のホテル ヒルトン

その免税店で、帰ったら生活費になるはずのボーナスを全額はたいて買ったロレックス

帰りの成田で、喧嘩になったのは言うまでもなく

「成田離婚」という言葉が俺の脳裏をよぎった・・・😞


消防という仕事柄、現場では少し大きくて重くて引っ掛かりやすくて

隔日勤務の時にはそんなに出番がなかったロレックス

洗面所のフックにぶら下がって時を刻むことを忘れた宝の持ち腐れだった

数年後、様々な会議や会合に出席するようになり、スーツを着る機会が多くなると

左腕にロレックスをはめることが多くなり

宴席ではお互いのロレックス自慢で話が弾み、親睦を深めた仲間が全国にいる


昨年退職して、ロレックスはその役割を終えて

今はまた洗面所のフックにぶら下がってることが多く・・・寂しそう

でも今回、何故かロレックスをはめて孫に会いに行った

正直に言うと、どっちかの息子が貰ってくれればなぁ・・・とずっと考えていたけれど

ランニング系の時計ばかり集めてる長男は、ロレックスなんて興味なさそうだったし

価値も解らないだろうな・・・と諦めていた


そんな息子も34歳

「欲しいならやるよホラ!」

エ???? 良いの?マジで

「その代わり、ずっとそばに置いとけよ!!」

と、帰りの客で混雑する歩道の真ん中で孫を背中から降ろし

立ち止まって左腕から時計を外した


悩むことも迷うこともなく即決で息子に譲った


それを見ていた娘と妻

えぇ? まだ生きてるのに渡しちゃうの? 死んでからで良くない?

お父さん、大丈夫? なんかあった? 


馬鹿野郎! 女になんかこの気持ち解んねぇべや!!

俺は、この日が来たことに、それが生きてる内にやってきたことが凄く嬉しくて

泣きたいくらいなんだ


ロレックスは俺とオッカちゃんの最初の夫婦喧嘩の原因を作った思い出の品

そして、その醜行は忘れることなく今も鮮明に覚えていて

許してくれた妻に、俺は今感謝と償いの日々を過ごしている


息子よ

ロレックスが似合う男に、ロレックスをはめるに相応しい男に  なれ

さよならシード

次のステージで輝け